前夜発で8/27(日)に赤谷川・笹穴沢を遡行した。
メンバーはかみさん。
前日の土曜日14時過ぎに自宅を出て、早めにレンタカーを借りようと越後湯沢に向かった。
買い出しをしようとスーパーに向かうところで、ふいにヘルメットを忘れてしまったことに気づいた。
湯沢のスポーツ店も見てみたがスキーメインの地にあってはどうしようもなく、とりあえず車を借りて元橋駐車場にデポしてから高崎のモンベルに向かうことにした。
在庫であった一般的なヘルメットを購入。
超軽量ではないが、昔のに比べれば十分に軽い。
とりあえず何とかなって、川古温泉手前の駐車スペースで車中泊する。
暑かったがいくらか寝られて、3:30起床。4:30頃に暗い中を出発した。
6:00頃には林道終点について、身支度を整えた。
警戒はしていたが、河原で身支度をしているとヒルがいつの間にかビニールなどに引っ付いているのを見た。
ただ、沢でヒルを見たのはここだけだ。
先行する単独の遡行者が1人いた。(この人は自転車で林道をアプローチしていた)
最初のゴルジュははっきりした踏み跡をたどって巻いた。
ノーマークの滝の巻きは奮闘的だった。
どう見てもここしかなく、けっこうよれた残置のひもも使いつつ、頑張ってのし上った。
自分が上がってからは、荷上げし、かみさんには空荷で登ってもらった。
クロガネ岩峰がカッコよく見えてきた頃は金山沢と笹穴沢の分岐も近い。
ちょっとしたナメ滝も美しい。
ほとんどの滝がうまいこと登れる。
2段30m滝が迫る。
近くで見るといかにもヌメヌメで水流も多いように思えた。
左のルンゼから巻けそうだったので、無理にトライすることなく巻いた。
ここの巻きは笹藪の立った斜面をトラバースするところもあり、なかなかに力を使った。
予想通りの晴天で、滝を登るのも気持ちが良い。
水は澄み、いかにもきれいだ。
滝の次はナメ、ナメの次は滝と続いていく。
滑床は長く、美しい。
ちょっときつめのウォータースライダーが楽しめそうだ。
赤っぽい20~30m滝は左壁が登りやすそう。
ランナーが取れるピトンが1本だけあった。
弱点を突いて「く」の字のラインをフリーで登る。
Ⅲくらい。
そしていよいよ50m大滝にお目見えする。
すばらしい。
ここまで来た甲斐を感じた。
先ほどの滝からすぐのため、ロープを付けたままで近づいた。
早速右壁から登りだす。
テラスに残置のピトンが3枚あるはずと探す。
しかし、ひん曲がり2枚を重ね打ちしたピトンが1カ所あるだけ。
仕方なく、自分のハーケンを2枚打ち足し、3本で終了点を作った。
かみさんに登ってもらい、2P目として核心部をトライ。
間近で見た感じではそこまで難しくはなさそう。
トラバースから水線の右を直上する。
Ⅲの段々登りとⅣのスラブの組み合わせといったところ。
Ⅲのところはピンなく、スラブには残置が1本、自分で打ったものが1本。
スラブといってもステルスラバーの靴ならさほどのこともない。
小川山でのスラブの経験が活きた。
傾斜が落ちたところに腕より太いくらいのしっかりした木が草付きから突き出ていたので、これでビレイする。
ところが、かみさんの登り始めがとても遅い。
ハーケンの回収がはかどらないためと思ったが、笛すらやっとの聞こえるぐらいでやり取りはできない。
3回笛を吹いてせかし、2本残置のまま登るよう促した。
時間が貴重なのだ。
ナメ滝は続くが、見上げると今回のメインである120m大ナメ滝が見えるようになる。
予定より遅れていたので少し急ぐが、これはまごうことなき絶景であった。
ここまで遡行したものだけが目にできる至高の景観。
滝の右壁側を登ったが、Ⅱくらいの登りで、どんどん高度を稼ぐことができる。
かみさんとロープをつけることなくグイグイと登る。
気持ちいいが、下を見るとこれがまた結構な傾斜になっている。
失敗は許されない。
屈曲部まで来るとさらに上のナメ滝を目にすることができる。
屈曲部を上から見たところ。
多くの遡行者を魅了するポイントだ。
最後の大滝、20mくらいの滝は右壁をフリーで登り、水線に近い笹藪に突っ込んで巻いた。
その上からようやくフィナーレとなる10m滝を一番奥に望むことができた。
少し雲が出てきていて、天気の崩れを予感する。
最後の踏ん張りどころの10m滝を左から巻くと、源頭域の景色が広がる。
水流も細くなり、主稜線も見えてきた。
意外と小滝がちょこちょこ出てくる。
的確に登らないと消耗してしまう。
こういったところは体が勝手に反応してうまく登れた。
段々と雲が集積しており、先を急ぐ。
しかし疲れを感じだし、歩みははかどらない。
沢状地形の部分は藪はほとんどない。
もう少しが長く感じる。
笹藪漕ぎは相応に疲れるが、濃い藪というほどではない。
古いトラバース道と思われる辺りなど明らかに薄かった。
ついに草原状の地形に出て、登山道までもう一息。
草原状の地形は白い花が出迎えてくれた。
できるだけ踏みつけないよう、足早に過ぎ去る。
仙ノ倉山やその稜線上の登山道がはっきりと見えた。
14:55頃、ようやく登山道に到着。
予定時間をオーバーし、けっこう疲れた。
身支度を整え、整備された登山道を使って下山の途につく。
平標山の家でくめる水(無料)は冷たくておいしかった。
レンタカーの返却時間を越えそうなので電話を試みるが、不安定で通話はできない。
データ通信は可能だった。
平元新道を降り始めてしばらくすると雨が降ったりやんだりしだした。
広い林道にたどり着いた頃には本降りとなり、雨具は着たがずぶ濡れとなった。
でも不思議と苦ではなく、(激しい)雨の中の歩きもまた愉しと思えた。
山の家から2時間弱で元橋駐車場にたどり着いて、ようやくほっとした。
駐車料金600円を無人の箱に払い、川子温泉に戻る。
このあたりは雨が降っていなかった。
着替えもそこそこに、今度は水上経由で関越道を走り、越後湯沢にレンタカーを返却した。
閉店ギリギリの19時少し前だった。
間に合いはしたが、超過料金やガソリン代をメーターでとられた。
いい時間なので、そのまま帰宅の途につく。
途中で食事は済ませ、22時を大きく過ぎた頃に帰宅。
すぐに片づけをしたが、沢装備を入れた袋の中にヒルがいたのを見つけた。
吸血されなかったが、どこについていたのかわからない。
たいしたお土産であった。
意を決した笹穴沢であったが、天気に恵まれ痛快な遡行を楽しむことができた。
行ってみて良かった。
有力な沢登り登攀者からすればメジャーでどうということはないのかもしれない。
現に単独の先行者すらいたし。
しかし、天候等のコンディションや自分の体力・気力を推し量っての決断までにかなり時間を要した。
20年越しくらいになろうか。
かみさんが付き合ってくれて本当に感謝しかない。
足並みをそろえて良いペースでついてきてくれた。
ヘルメット忘れで出ばなから迷惑をかけた。
そもそも各種諸費を相当にかけた、贅沢な計画であった。
ハーケンの未回収などこの際どうでもいい。
(でも、今や手に入りにくいBDのハーケン・ロストアローはちょっと惜しい)
この手の沢を自前でやるのはもうここいらが限界かな?
ルートファインディングや滝の登攀はまだいけそうだったが、体力や思考・判断の錯誤など総合力に陰りがあるのは確かだ。
(ヘルメットを忘れるなんて!)
もっと年寄りでバリバリの人はたくさんいるが、自分もそういう人と同じにできるかというと?でしかない。
ともかくも、上越の名渓である赤谷川の笹穴沢の遡行を自分たちで成し遂げられたことには深い満足を覚えられた。