前日にアプローチして、10/8(日)に念願の黒伏山南壁中央ルンゼルートにトライした。
メンバーはかみさん。
この壁の存在は岳人に2007~8年頃に雪彦山とセットで紹介されて知るようになった。
東北・山形と宮城の境近くにあり、けっこう遠いイメージがあった。
また、ルンゼルートということから悪く、湿っている印象もあった。
それでもこの黒伏山南璧というのは、尊敬してやまない古のクライマー小川登喜男が1928年(昭和3年)に南西稜を初登したといわれる場所で、いつの日か彼らをリスペクトして現代のクライミングスタイルで登ってみたいと念願することとなった。
(小川登喜男の初登については、実は肩までで正式な初登ではなかったらしい)
昨年はK礒さんと計画したが、コンディション不良と判断してアプローチ偵察だけとなった。
今回はともかくも1ピッチなりとも登っておかなければキリがつかないとの思いが強くなり、惰性ではあったが計画と実行に及んだ。
前夜の泊はP3でなく、道の駅天童とした。
アプローチ入り口まで車で30分とかからないので、この方が良かった。
トライ当日の天気は読み通りばっちり。
ただ、前日まで雨模様で夜まで残っていた。
アプローチはネットでゲットした地元の人御用達の道に替えた。
これは正解であった。
6時30分頃駐車スペース発。
8時頃取付き発。
壁は昨年同様に一部濡れており、どうかと思われたが、悪ければフリーにこだわらず人工手段を用いることとし、ともかくも風の踊り場までは行こうと決意していた。
できればオールフリーのつもりではいたが、濡れて立ったところにあるベタ打ちのピトンに用意していたあぶみを自然にかけてしまった。
残念!
久々のクライミングということもあり、正直怖さはあったが次第に慣れてきた。
易しめながら失敗ができない凹角の登りを経て、終了点に達する。
2P目はⅢで易しめだった。
このピッチは5.8とのことだが、なかなかに微妙なフリーの登りを楽しむことができた。
要となるところにはハンガーボルトが打たれていたが、他はピトンであった。
ここはびちょびちょで、ホールドが確かでなかったので1歩上げるのにA0した。
このピッチは出だしこそ濡れていて悪かったが、その後は寝たスラブでⅢの登り。
50mロープで2~3m余るくらい。
次の5P目以降はルンゼ状の壁の中に入っていく。
しかし、見るからに水流がありまともには登れなさそうに見えた。
易しいが、部分的にいやらしい。
支点を見つつ、終了点を探す。
上の写真の左の方のやや平の外形斜面に終了点を見つけた。
ぼろスリングがかかっているものだったが、ハンガーボルト2本だった。
しかし、うっすらとした水流の中にあり、そこに行く意味はないように思えた。
ここまでだな、と思った。
小川登喜男へのリスペクト、十分に果たしたような気になった。
左トラバースして終了点に向かわず、そのままクライムダウンして4P目の終了点に戻った。
11時頃だった。
ここまでと決めたからには速やかに下降動作に移った。
ギリギリよりは余裕があるくらいで終了点にたどり着けた。
次は1P目終了点をめざし、やはり少し余るくらいでたどり着けた。
各支点はラペルリングが使え、最初の懸垂こそロープを引くのが重かったが、後は比較的楽に引けた。
取付きに戻ったのは12時過ぎ頃であった。
アプローチは谷状の道で踏み跡もはっきりしており、たとえ夜間ヘッデン歩きになっても心配なさそうだった。
ただ、パイプをつないだだけの人道橋は不安定で、集中を要する。
坂下山トンネルの駐車スペースに戻ると、さっきまでいたルートの全景が見えた。
途中敗退ではあるが、すっきりとしたやり切った感をもつことができた。
自分の今の実力からしたらここまでできたのは本望で、満足しうるものであった。
汗を流しに、それほど遠くない温泉に向かった。
この温泉は500円と比較的安く、源泉かけ流し、その上に空いていてのんびりと寛ぐことができた。
道の駅に寄って買い物し、帰路に着く。
さしたる渋滞もなく、自宅には22時過ぎには到着した。
かみさんに今回もあらゆる面で加勢してもらったことに感謝しかない。